【ワークショップ(読書会)】
- 発表者:森田俊吾
- 対象詩:Poèmes de l’aube (1990)
取り上げる詩人はポール・ド・ルー(Paul de Roux, 1937–2016)です。
今回は、詩集『Poèmes de l’aube』(1990)から 2 篇、アンソロジーから 1 篇(« Le chat prend la parole »)を選びました。
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報告
フランスの詩人ポール・ド・ルー(Paul de Roux)を取り上げた読書会が行われました。発表担当者は、私、森田俊吾です。ド・ルーは 1937 年、フランス南部のニーム(Nîmes)に生まれ、主に編集者として活動した後、40 代を過ぎてから精力的に詩を発表した人物です。彼の作品は、難解な表現を避け、日常的な風景や平易な言葉を用いる「新しい平凡な言葉(nouveau sermo pedestris / 平俗体・日常派)」の系譜に属することが特徴として挙げられます。また、その分かりやすさの背後に、ある種の余白や、日常の中に潜む大きな「不可視のもの(invisible)」への兆候が作品に深く刻み込まれているのがルーの作品の特徴です。
前半では、1990 年刊行の『夜明けの詩集(Poèmes de l’aube)』から「フロワドゥヴォー通り(Rue Froidevaux)」と「雨上がり(Après la pluie)」を読みました。パリのモンパルナス墓地に面した通りや、雨上がりに光の差し込む情景が、まるで映画のワンシーンやスナップショットのように描かれていました。一方で、用いられている語彙から、生者と死者の空間の対比や、「ヤコブの梯子」のような神々しさも感じ取られます。
後半では、1998 年刊行の詩集『目の中の太陽(Le soleil dans l’œil)』に収められた「猫が話し出す(Le chat prend la parole)」を扱いました。ここでは、「ヨコハマ(Yokohama)」と名付けられた老猫が明確な一人称として据えられており、物書きである飼い主との静かで何事も起きない生活が語られています。参加者からは、猫の視点を通すことで人間の生活感や作家自身の晩年の寂寥感が浮き彫りになり、会話を示すダッシュの記号が独特の間や遊び心を生み出している点に関心が集まりました。
(報告者:森田俊吾)