【ワークショップ(読書会)】
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発表者:崔盛雄
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対象詩:« La Main d’Emma »(エマの手)
報告
フランスの詩人・作家ジュード・ステファン(Jude Stéfan, 1930–2020)を取り上げた、フランス現代詩読書会(第 19 回)が行われました。発表担当者は崔盛雄さんです。
ジュード・ステファン(本名:ジャック・デュフール Jacques Dufour)は、教職に就く傍ら、1960 年代後半からガリマール社などから詩集や小説を精力的に発表し続けた詩人です。彼の詩学は、生と死、エロティシズム、そして崩壊に向かう肉体や運命を、過酷なまでの率直さと冷徹なアイロニー、あるいはグロテスクなユーモアを交えて描く点に特徴があります。
今回の読書会では、彼の代表的な詩篇の一つである「エマの手(La Main d’Emma)」を精読しました。
本作品は、タイトルにある通り「手」や「上半身」の描写を中心としており、かつて繰り広げられたダンスの情景や、親密な対話の回想が緩やかに描かれています。しかし、その甘美であるはずの記憶の底には、常に「死の忘却」や「瓦解(débâcle)の冷たさ」が張り付いており、生と死の境界が極めて曖昧に交錯しています。
議論の焦点となったのは、詩の随所に散りばめられた様々な舞曲(ダンス)のイメージです。17 世紀にフランスで流行した快活な舞曲「フォルラーナ(forlane)」や、下町のパリジャンに愛された「ジャヴァ(java)」、そして哀愁を帯びた「タンゴ(tango)」といった多彩なステップのリズムが、詩行全体の躍動感と、崩壊しゆく肉体の沈黙という静寂のコントラストをいかに際立たせているかについて、多角的な視点から分析が行われました。
(報告書:森田俊吾)
ジュード・ステファン(Jude Stéfan)について
略歴
- 生涯:
1930 年 7 月 1 日、フランス・ベルネー(Bernay)に生まれる。高校(リセ)の古典語(ギリシャ語・ラテン語・フランス文学)の教師として長年勤務し、ノルマンディー地方のオルベック(Orbec)で隠遁的な生活を送りながら執筆活動を続けました。2020 年 11 月 11 日、90 歳で逝去。 - 作風:
伝統的な抒情詩の感傷性を厳しく退け、バロック的とも言える「死」の強烈なイメージやラテン古典文学の影響を受けた冷徹な美学を追求。省略の多さが特徴的。
主要な著作
- 詩集『Cyprès』(1967 年)
- 詩集『Libertins』(1970 年)
- 詩集『L’Auxiliaire』(1984 年)
- 詩集『Laures』(1997 年)