Atelier/Poétique

フランス現代詩研究会

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現前 Présence

「現前」の形而上学は、ボヌフォワの詩学の核となる思想であり、ヘーゲルやハイデガーの影響を受けたとされている。概念によって普遍化する機能を持った「言語」を通して、如何にいま・ここにあるものとしての「現前」を描くかが彼にとって重要な詩的主題となる。

「現前」としての死すべきものという思想をめぐって、中心的な役割を果たしているのが詩人シャルル・ボードレールである。「ボードレールは詩に刻みこまれた大いなる供儀的な観念を生き返らせた。多くの人にとって神が存在するのをやめたときに、彼は死が有効でありえることを発案した。死だけが失われた存在の統一性を作りなおすであろうことを。(田中淳一訳「悪の華」)」そういった「死」の文学者に連なる存在としてマラルメやプルースト、アルトーやジューヴを挙げている。

またその意味で彼にとって重要な仮想敵であったのは観念論者としてのポール・ヴァレリーである。彼はヴァレリーを「なるほど不幸からも不幸への想像力からも護られてはいたけれども、物たちを能く愛し得なかったがゆえに、また、最も肝要なものであるあの涙まじりの歓び、たちまちに詩作品をそれ自らの夜からもぎ話すあの歓びを奪われたがゆえに、観念たちへと、語たちへと(語の直知可能な部分へと)断罪された詩人(阿部良雄訳「ポール・ヴァレリー」)」と評している。

Yves Bonnefoy, L'Improbable, suivi de Un rêve fait à Mantoue, Gallimard, 1980.
Yves Bonnefoy, Entretiens sur la poésie (1972-1990), Mercure de France,1990.
Yves Bonnefoy, Lumière et nuit des images, sous la direction de Murielle Gagnebin, Champ Vallon, 2005.
イヴ・ボヌフォワ『ありそうもないこと』、現代思潮新社、2002.
清水茂『イヴ・ボヌフォワとともに』、舷燈社、2014.
(久保田悠介)
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